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    感嘆、感想、あるいは

    2014
    09/02
    *Tue*
    CATEGORY : 小説・漫画 | THEME : ブックレビュー | GENRE : 小説・文学

    パロール・ジュレと魔法の冒険 (角川文庫)パロール・ジュレと魔法の冒険 (角川文庫)
    (2014/02/25)
    吉田 篤弘

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    凍る言葉の神秘によせて。
    キノフ
    言葉が凍りついて結晶になる街、キノフ。
    なんて魅力的な街なんだろう。なんて、美しい。
    そんな街に住んでいたら、わたしは迷わず、ためらわず、まるでストーカーよろしくあの人の部屋に落ちているジュレをそっと集めて帰るだろう。
    誰もが寝静まった夜に、鳥肌が立つ寒さを忘れて、冷え切った紅茶を飲みながら。なめし皮の代わりに普段使うことのない眼鏡拭きを取り出し、手に入れたそれらを丁寧に丁寧に磨き上げる。
    これがあの人の声。これがあの人のため息。
    そして解凍するたびに、唸り声ともため息ともつかない声があがる。わたしはそのことに気付かない。
    わたしの知らない秘密にそっと耳をすまし、楽しそうな様子には嬉しくなって、悲しそうな呟きには何もできない歯痒さを思い、そしてわたし以外の誰かを呼ぶ声に落ち込む。
    誰も聞かない白い呟きはハッカキャンディのように新たなジュレになって、解凍のために机を片づけた代償として乱雑に本が積み上げられている畳の上に落ちていく。
    二つある窓を開け放した部屋は寒く、ジュレは溶けることなくしばしそこにとどまる。
    わたしはジュレの解凍を一日一つと決めながら、結局その誓いはあっさり破られて、罪を暴こうとする朝日より先にすべてを胸の内にしまうことに決める。
    そうして一晩。冷え切った体を持て余したわたしは光から逃れるように温かい湯を求めに席を立つ。
    こっそりわたしの目を盗んで部屋に入った同居人の猫が、何年も前に遊び方を忘れられたおはじきみたいなジュレをザラザラした舌で救い上げるのを承知して。
    「へぇ」「ふうん…」「そう」「はぁ」「もう、やめよう」
    厭世的な吐息は胃もたれを起こし、やがて毛の塊になって吐き出されるに違いない。

    もしくは、フィッシュ
    わたしが紙魚(しみ)なら。
    何番目かのフィッシュなら。
    諜報員という言葉に胸の高鳴りを感じながら、部屋の本棚を見回す。
    『第二若草物語』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『グレイがまってるから』『夜中にジャムを煮る』『食味歳時記』『夏への扉』『4時のオヤツ』……。
    文字に起こして恥ずかしくないのはこの辺りか。しまった、第二、第三、第四とあるのに、ただの若草物語がないことの気持ち悪さを思い出してしまった。
    一つのことを長く考えていられない性格は、諜報員には向いていない。
    以上、フィッシュへの夢想。30秒で終わり。

    パロール・ジュレ
    言葉は嘘をつくのに取り返しがつかないから、凍るぐらいでちょうどいい。
    そんな感想の裏側で、わたしはただひたすらに、ジュレを口にすることばかりを考えていました。
    この本を読みながら一番気になったことは、ジュレの味でした。
    他人のでも、自分のでも良い。
    ただジュレを、凍った言葉を、いつかわたしの舌で味わってみたいと思うのでした。
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    秋月しの

    Author:秋月しの
    趣味はお菓子作りと紅茶を淹れること。
    不定期開催・姉妹カフェsweettripの店長兼妹ぴよだったり、中野のメイドバーg-Luv.のクラシカルメイドだったり。

     


     


     


     


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